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技術発表

「プレボーリング根固め工法の杭頭補強筋スペース確保」

「平成11年度建築工事の生産工程改善などに関するコンクール」応募作品

はじめに

社会の情勢の変化に伴い、我々建設業の施工方法も社会の進化とともに、より新しい工法へと歩んで来た事と思います。
入社以来10年になりますが、建設業に関しては学校の教科書の知識程度で実物を見ることも、触れることもなく体験する機会もありませんでした。今回建築工事の生産工程改善等に関するコンクールに、プレボーリング根固め工法の議題で発表することとなり、入社以前の杭打ち工法の知識を得るため、諸先輩に話を聞いてみました。

20年前頃は、杭をディーゼルハンマーで直打ちする方法が主流であり、その際に生ずるディーゼルハンマーの油の飛散、騒音、振動で近隣の方々には大変ご迷惑をかけたものだと話しておりました。又油飛散防止シートを張っても、風の強い日にはシートを越えることがたびたびあったようです。
その後、この欠点を解消するため、オーガーを併用したエアハンマーによる杭打ち作業になりましたが、この方法も最終的に1メートルは直打ちになり、振動を消去することは出来なかったようです。最近はまだ、小規模な建物はオーガー併用のエアハンマーによる打撃工法で施工を行っておりますが、市内の大規模な建物は、プレボーリング根固め拡大工法が主流となってきたようです。
この施工方法により欠点がだいぶ解消されましたがこの施工だと建設発生土の産業廃棄物が副産物として生じることになりましたが今回はこの件については触れずに発表いたします。


概要

概要表
工 事 名 : 北都銀行湯沢支店新築工事
工事場所: 秋田県湯沢市大町2丁目57番地
工   期: 平成11年6月9日 ~ 平成11月11月30日
構   造: 鉄骨造2階建て
敷地面積: 1822.0.0m²
建築面積: 677.0m²
延床面積: 1045.0.0m²
杭 工 法 : PHCパイル0450 L=16.000 32SET
プレボーリング根固め工法
杭伏図

計画

プレボーリング根固め拡大工法の杭頭補強の杭頭補強の施工上の留意点について検討し、杭頭補強筋の入る部分の固形化したセメントミルクが入らない施工方法が無いものか検討した結果、次の3通りの案がでました。

A案 従来工法 B案杭頭にセメントミルク金物  

A案


従来工法として杭頭をそのままの状態で施工

B案:


杭頭にセメントミルクカットの金物を装着し施工

C案:

  • パイルキャップを1/4切断し、杭内部に装着する施工
  • 仕切板(コンパネ)取付
  • ビニール袋に砂を入れて杭内に充填する。

試験施工

A案 試験杭3本で施工

従来通りの施工方法であり問題なく所定の位置に設置

B案 本杭2本で施工

最初のうちはスムーズに沈下をしていましたが、次第に杭に対する摩擦力、浮力生じ沈下速度が鈍り、所定位置に設置するまでかなりの時間を要しました。
また杭が高止まりになる危険を感じました。

C案 本杭2本で施工

B案と同じように、最初はスムーズに沈下をしていましたが、B案と同様に沈下速度が遅くなり、高止まりになる危険性を感じました。


施工方法の検討

A案

今回は施工を見合わせる

B案

沈下速度の低下は、セメントミルクカットの金物が杭内を完全にふさぎ、セメントミルクの流出を阻止し、浮力が生じたことと杭自体の摩擦力が原因と思われます。
この方法も杭の高止まりの危険性があり不採用といたしました。

C案

杭内を1/4解放したが、杭内に存在する土砂等の不純物がその広さでは完全に流出することができず、沈下の妨げになったことと思われます。
現在の状態で施工することは、リスクが大きく開口面積を変更することにしました。かつ、安全性を考慮し、開口面積を1/3として残り全数量を26本を施工することに決定しました。


施工の実施

開口を大きくした杭は、セメントミルクを完全に杭内より排出し、工事は工程に支障なく、終えることが出来ました。


施工結果

いよいよ掘削工事が始まり、杭頭が見えてきたときは今後でる結果と期待とで不安でいっぱいでした。

A,B,Cの3案で計画された施工結果は次のようになりました。

A案

従来通りの作業方法ではなく、省力化に取り組んだ計画でありましたが、この3本については電動ピック及びテコ等で細かく砕き、細長いスコップを利用し取り去る方法で施工せざるを得ませんでした。

B案

ワイヤーを引き上げるだけで杭頭補強筋スペースのが出来るということで使用した、特許出願中の鋼製セメントミルクカット金物でしたが、チェーンブロック等を使用しても、容易に引き上げることが出来ず、最終的には金物内のセメントミルクを掘り出してからの引上げ作業となりました。

C案

計画通りに装着された杭は、砂、ビニール袋、仕切り板を取り外すと杭内部2/3の空洞が出来、残り1/3のセメントミルクの掘り出しは容易に出来ました。
しかし、 杭が横向きの状態で装着するために、パイルキャップ、仕切り板の取付固定不良、砂の充填不足等が生じた杭は、吊り上げ作業、また吊り下ろし作業の衝撃に耐えきれず、正規の形が保てずにセメントミルクが流入して、A案に近い労力を費やしました。


今後の対策

A案

杭径が大きくなるに比例し、掘削速度も深くなり、労力、作業日数、は多くかかりますがB案と比較すればコストは軽減されます。

B案

引き上げ不可能の原因は、杭と金物の隙間、金物内部へのセメントミルクの流入を防ぐことで解決するのではと思われます。

  • 金物上部にフタをする。
  • 金物内部にエアーバック等を装着する。
  • 金物内部に流入防止のものを入れる。

金物装着、引き抜きには労力、作業日数は少ないのですが、コスト的にはA・B・Cの3案の中では、多くかかると思われます。

C案

初めての試みであり粗末な仕組みではありましたが、正確に装着することで期待した結果に近い成果が出たことと思われます。今回の対策としては、パイルキャップ、仕切り板の固定方法、砂の充填方法また、仕切り板を容易に取り外すことが出来るように先細りにするなど、いろいろありますが、今後の対策としては、今回5種類もの材料を使用したわけですが、今回使用した材料にこだわらず、1回でかつ、正確に装着出来るものにしたいと思います。

ABC案の対比票(概算) φ450
  装着労力 取外労力 B金物 C材料 掘削労力 合 計
A 0 0 0 0 4,000 4,000
B 100 1,500 5,500 0 4,000 11,100
C 400 1,500 0 600 1,000 3,500

C案は改良することにより、軽減すると思われます。


終わりに

最後になりましたが、建設業界の施工方法も年々進歩しております。

現在はセメントミルクを人力にて撤去しておりますが、新工法開発時に簡単にセメントミルクを撤去することなぜ考えなかったのでしょうか?

また、同工法の現場に着任する際には、今回の経験を生かしより成果を上げたいと思います。