「建築工事に関する技術体験発表会」平成12年度発表作品
工事名称: | 湯沢警察署庁舎改築工事 |
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構造規模: | 鉄筋コンクリート造 3階建て |
建築面積: | 1,115.98m² |
床面積 : | 2,7226m² |
これは湯沢警察署の改築工事であり、元請が伊藤建設工業(株)で当社が基礎、躯体工事を担当させていただきました。発注時期の関係から、杭事業工事が1月下旬の、もっとも厳しい寒中での工事となり、より施工の精度を高める為、根固め固定液の初期養生について考えてみました。
杭仕様は長さ14mでプレボーリング根固拡大工法であり、地質は0~7mまでは粘土、7~9mまではレキ、9~12mまでは粘土、12m以降はレキの連続となっております。
建築工事共通仕様書における寒中コンクリート供試体の養生は、標準養生では20℃±2、現場養生は現場内に水中養生となっております。根固め固定液は20℃±2となってりますが、現場養生について明確に託された項目はないように思われます。
特に寒中での固定液の初期管理は凍結の危険が予測されるので、特別な管理方法が必要ではないかと考えました。
根固め工法は認定工法であり、各社独自の施工方法、管理方法があります。
特に寒中での初期養生についてきいてみましたが、規定、マニュアルがなく、固定液が安定するまで凍結しない方法で初期養生を行い、その後20℃±3の温度で所定の期間、養生をするとの回答でありました。
プレファブ室内では、日中は25℃、夜明け前にはマイナスまで気温が下がります。注入された固定液は地下14mに置かれており、あまりにも条件がかけ離れている状態で、本当によいものかどうか不安になり、自分自身が納得できる方法が無いことかと思い、取り組んでみました。
出来ることなら注入された固定液の供試体を、寒中コンクリートの供試体のように、建物と同じ状態に近い養生が出来れば、と思いましたが、地下14mでの養生は不可能であります。
それでは地下に近い状態に現場を作り、そこで養生することが出来れば最適であると思い、写真1、2のように、断熱材で囲い、内部に火災防止を兼ねて不燃材を張り、投光器を熱源とし、数日間温度管理を行いました。その結果、20℃より温度が下がらない事が確認出来たので、その箱を採用することにしました。
養生要領)24時間管理 保温ケース内温度13℃±2 湿度65%程度>
温度を一定に保つためにサーモ付とし、空気が乾燥しないよう、加湿器を設置し、少しでも地下に近い状態になればと思いました。
次の作業は地下14mでの土の温度を調べることであります。
湯沢地方では消雪に地下水を使用しておりますが、その温度は12~15℃がほとんどであります。
地下14mの位置でもそれに近い温度が予測されますが、試験堀を行う手もあり、その掘削孔より多孔管のビニールパイプを挿入する事で温度計測が可能であるのではないかと思い、写真3のような試験掘削後、杭打機械にて挿入を試みましたが、試験掘削は、周辺固定液を使用しないため、オーガーを引き上げるときに中間層であるレキ層が崩れ落ち、所定の位置まで挿入する事が出来ず、この試みは失敗に終わりました。
次は、単純な考え方ですが、試験堀は1m毎に土を採取するため、その温度を測定し、温度設定することにしました。
採取した土の温度は表の様な結果になりました。
1m | 2m | 3m | 4m | 5m | 6m | 7m | 8m | 9m | 10m | 11m | 12m | 13m | 14m |
5℃ | 6℃ | 9℃ | 9℃ | 18℃ | 18℃ | 14℃ | 12℃ | 13℃ | 13℃ | 13℃ | 13℃ | 21℃ | 21℃ |
5~7m、12m以降の温度が高いのはオーガーへットとレキとの間に摩擦熱が生じるせいであり、粘土層では摩擦が生じないためほぼ一定した温度が計測されると思われ、10~12mまでの13℃という温度がもっとも条件に適していると判断し、設計事務所へ今までの経緯を報告し、供試体の初期養生は13℃に設定することを承諾して頂きました。結果的に根固め固定液の供試体初期養生は目的を達せられたと思います。
最後になりますが、今回採用した方法が良いか、否かは決定する事が出来ませんが自分自身を納得させることが出来たと思います。
寒中コンクリートの供試体のように寒いときは寒いなりに、暑いときは暑い季節に応じ、根固め固定液の供試体も注入された固定液と近い状態での養生方法が確立される事を願いつつ、終わりとします。